こころ 社会

津波てんでんこ

 

「津波てんでんこ」

 

🐻

「震災の国、日本。その中で最も大きく、たくさんの人が亡くなった津波。津波が起こった東北地方の言葉。津波てんでんこ。津波てんでんことは、どういう意味かと言うと、てんでんことは、”それぞれがばらばらに”と意味です。”てんでんばらばら”のてんでんこです。実際に岩手県のある地方で、この津波てんでんこを、避難訓練で行っている中学校があります。はなちゃん、避難訓練とは何かな?」

 

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「火事とか、起きてないけど、それが起きたことにして、みんなが逃げる。」

 

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「そう。津波が来てないけど、津波が来たと想定してみんなが逃げる。そして、みんなで決められた避難場所に移動する。しかし、その中学は違います。それぞれがめいめいバラバラに逃げる避難訓練をやっているんです。」

 

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「変なことしてますね。」

 

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「私たちが知っている避難訓練とは違うから、そう思う。実際に3.11のときに何が起きたかと言うと、その中学に本当に津波が来てしまった。学校には、指定の避難場所を設けるルールがあります。」

 

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「行政から、指定の避難場所を設けなさいと言われている。設けないと開校できないからな。」

 

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「そう。ルールだから、仕方がない。その中学校の学生も、そうした避難場所があることを知っています。その避難場所に向かおうとした、中学生に先生は、『てんでんこだ!』と言ったそうなんです。」

 

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「てんてこまいだ!」

 

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「静かに聞いていなさい。」

 

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「ごめんなさい。」

 

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「そこで、ある中学生が『あそこじゃない!、もっと高いあの場所へ行こう!』と言って動き始めた。もちろん、全員がその中学生について行ったわけではなく、それぞれがてんでんばらばらの道順で行ったそうです。だから、物凄い速いスピードで、みんなが高いところへ避難できた。みんなで同じ道を通ったら、渋滞が起きてしまって、もしかしたら危ない子も出たかもしれない。動きが遅い子、判断が遅い子、足が遅い子、誰かを助けようとした子、肩を貸そうとした子も津波に飲まれていたかもしれません。この地域の小中学校の生存率は99.8%。ほとんどの小中学校では、半分くらいが亡くなっています。この地域では、津波てんでんこを日常から、共有していたからだそうです。津波てんでんこから、私たちが日常に持って帰れる4つのポイントがあります。」

 

✅自助原則の強調
自分の命を守るために、人の事は構わずにてんでんばらばらに素早く逃げる。
🐹「つまり、自分のことを優先しなさい。」

✅他者避難の促進
自分の逃げる姿を誰かが発見する事によって、逃げない人々に避難を促す。
🐹「津波のとき、家から避難しなかった人はほぼ全員亡くなっている。避難している人の姿を見て、自分も逃げなきゃと思うこと。津波警報が日常茶飯事にあるので、津波への警戒心が薄れていた地域もあるぞ。警報が鳴ったから、津波が必ず来るわけではないからな。来ないことのほうが多い。だから、3.11では、逃げずに亡くなった人が多い。」

✅相互理解の事前醸成
日常から大切な人と、「津波のときはてんでんこしよう」と約束し、信頼を築いておく。
🐹「何か起こったときにだけ共有しようしても無理がある。日常から、てんでんこしようと信頼を築いておくこと。ここでいう信頼は、一緒に逃げよう、同じことをしようではない、違うことをやろうということ。考え方が違ったら、お互いバラバラで行こう!という信頼じゃ。表面的に仲の良い信頼関係ではない。」

✅生存者の自責感の低減
大切な人と「てんでんこ」を約束しておき、「約束していたのだから仕方ない」と罪悪感を減らす。
🐹「大切な人が亡くなったときに、生き残った人たちが自分を責めないようにすること。」

 

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「一見すると、矛盾しているようなところもある。自分のことだけ考えなさいとか。しかし、自分のことだけ考えて素早く行動することが、誰かの命を救うこともある。自分が信じた行動をすることで、周りの人達の行動が変わることもある。その信頼関係は、いざ何かが起きたときではなく、日常から信頼を築いておくことによってできる。いつどこで誰と居ようとも、心の矢印を相手に向けることが大切です。日常から、てんでんこしよう、君は君の考えでいこう、僕は僕の考えでいく、それでいいじゃないか。そんな信頼があるから、たとえ大切な人が亡くなったとしても、それを自分の責任だと思う気持ちを少しでも軽くしよう。自分が死んだ後、大切な人に辛い思いをさせないようにしよう。それが”津波てんでんこ”という言葉に込められているそうです。」

 

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「死を受け入れて生きようとしているんですね。」

 

🐹

「絶対死にたくない、人を殺してはいけないなんて言ってたら、津波てんでんこは成り立たない。生徒にバラバラに逃げろなんて言って、学校は死んだら責任は取れるのかなんていう社会では、てんでんこは成り立たない。先生としては、かなりグレーな発言だな。」

 

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「同調圧力なんて1ミリもない。だからこそ、誰かを救えたり、信頼関係を構築できたり、自分が死んだ後の人にまで思いを馳せることができる、そんな豊かな人間になれることを、津波てんでんこは教えてくれている気がします。みんないつか死ぬ、それをしっかりと受け入れる。」

 

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「むぎちゃん🐔も?…」

 

🐻

「むぎちゃんも、はなちゃんもだ。きっといつかは死ぬことを受け入れる。明日死んでも悔いが残らないように、感謝して、全力でいまを生きることが大事です。」

 

🐥

「むぎぃじゃ〜〜ん〜

 

🐻

「ちょっと言い過ぎたか?」

 

🐹

「大丈夫です。あとはお任せください。」

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